地理学評論
Online ISSN : 2185-1719
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
狩野川の氾濫による洪水堆積土とその理化学性
荒巻 孚高山 茂美
著者情報
ジャーナル フリー

1960 年 33 巻 3 号 p. 139-150

詳細
抄録
今次の氾濫の傾向を通観すると,修善寺橋付近を境にして,その様相はかなり異つている.修善寺橋から上流の地区は浸水流がほとんど河道に関係なく.河谷に沿つて最大傾斜面を流れ,河岸の土地の多くを洗堀流去させている.これに対し,修善寺橋から下流の地区は土砂の堆積もいちじるしく,堆積土量も4×106m3に及ぶ.この地区の浸水の傾向はおもに,水衝部にあたる攻撃斜面側の堤防が欠潰して氾濫したものであるが,概して右岸側の欠潰が激しい.南条地区では,浸水流が東側の旧河道に沿つて流れた形跡があつた.また,浸水・堆積の状態から今次の氾濫現象を類別すると,欠潰型浸水 (A・B・C型)と〓流型浸水 (D型)の4つの型に大別出来る.
氾濫によつて堆積した土砂(洪水堆積土)の理化学的性質をみると,上流地区は粗砂土から細砂土の土性を有し,単位重量当りの土壌の表面積も小さい.しかるに,下流地区は細砂壌土から埴壌土の土性をもち,土壌の表面積も大きく,腐植含量および礬土・石灰・加里等の化学成分の含量がかなり多い.また,洪水堆積土の理化学的性質を在来原土のそれと比較すると,白山堂から上流の地区は堆積土のほうが在来原土よりも却つて粒径が粗く,単位重量当りの土壌の表面積が小さく,腐植含量も少ない.これに対し,白山堂よりも下流の地区では,堆積土は在来原土よりも,粒径が細かく,土壌の表面積も大きく,腐植含量や無機成分の含量が一般に多い.従つて,下流の一部地区において,氾濫による土砂の堆積が,土地改良的効果をもたらしたように考えられる.
著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top