地理学評論
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常磐炭田における石炭生産力の展開
丸井 博
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1961 年 34 巻 1 号 p. 22-36

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抄録

本研究は,常磐炭田における石炭鉱業の展開過程を地域的に考察したものである.地表における鉱業現象は,地下の炭層埋蔵状態と密接に関連している.
そこで,まず常磐炭田における鉱業現象の地理学的側面を明らかにした後,炭層埋蔵という自然条件がどのような形でその基盤となつているかを分析した.ついで,かかる基盤の上に明治以来どのように石炭鉱業が展開されてきたかを検討し,その過程の中で石炭鉱業独特の生産の集中現象の地域への投影を考察した.そして,最後に,生産の集中の結果としての生産力の構成と炭鉱の系列の現状を分析した.
結果として,炭層条件の最もすぐれた2地区に生産の集中と生産力の独占が行われていること,常磐炭田の生産の核心地は,明治30, 40年代に形成されたこと,採炭の進展は同時に採炭条件の悪化を必然的に伴うという鉱業の特性によつて,鉱区を媒介とする中小炭鉱の発生と大炭鉱への隷属関係が生じ,この関係は,地域的に強弱があることを明らかにした.

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