抄録
人口集団を指す「人口」と,その数的表現である「人口数」を直接の対象とする人口地理学は,地理学の他の分野とくらべ比較的に未発達であることは多くの地理学者によつて指摘されている.人口分布論を中心として発展して来た人口地理学は,人口学 (Demography) の分野での分析のテクニックと研究成果をより取り入れることによつて一層の発展がなされるものと考えられる.
人口数の増加傾向を歴史的に規定する根本的条件がその地域の人口の収容力(経済の力),その構造およびその拡大の速度であると考えられる故に,人口数の変動に関する問題は人口地理学の一つの課題として重要視されて来た.人口学的には,人口数の変動は出生,死亡,人口移動の3つの要素により規定されるといわれるが,地理学においてもこの3つの要素に注目する必要がある.それは,これらが社会経済的構造変化と密接な関係を持つて変化し,人口数に変動を与えるからである.換言すれば,出生死亡,または人口移動の現状と構造,変化とその要因を分析することによつて,人口収容力ならびに人間社会のより深い理解が可能であるからである。