日本薬理学雑誌
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総説
リアルタイム3次元心エコー法による霊長類の心機能測定
─薬理試験および毒性試験への応用─
鬼頭 剛
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2007 年 129 巻 6 号 p. 437-443

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抄録

薬理試験あるいは毒性試験の心機能評価として,経時的にしかも無侵襲で心臓の左室容積および左室機能を測定することは,重要な手段の一つである.最近導入されたリアルタイム3次元(RT3D)心エコー法を用いてカニクイザルの左室容積および左室収縮能の基礎的なパラメータを測定し,β遮断薬およびカルシウム拮抗薬のベラパミルの作用を比較検討した成績について解説する.実験として,雄性カニクイザルを麻酔下で,RT3D心エコー法を用いて心臓のイメージを記録・測定し,画像の解析には,専用のソフトを用いている.左室機能の評価として,左室拡張末期容積(EDV),左室収縮末期容積(ESV),1回拍出量(SV),左室駆出率(EF),心拍出量(CO),心拍数(HR)を測定した.まず,(1)RT3D心エコー法のプローブの精度について,in vitro実験の成績,(2)基礎的な測定として,左室容積に対する2D心エコー法,RT3D心エコー法における値を求め,実測値との相関関係,(3)プロプラノロール,メトプロロールおよびベラパミルを静脈内持続注入し,左室容積および収縮能を比較してみた.カニクイザルの左室容積に関して,RT3D心エコー法で求めた左室容積と実測値との間には強い相関関係が認められ,さらに2D心エコー法とRT3D心エコー法で求めた値にも相関関係がある.プロプラノロールおよびメトプロロールはESVの増加を生じて,その結果EFおよびSVは減少した.ベラパミルはEDVとESVのいずれも増加させ,それによって,SVはEFが軽度に減少したにもかかわらずほとんど投与前値を維持した.RT3D心エコー法は,薬理試験および毒性試験においてカニクイザルの左室容積および収縮能の変化を正確にイメージし,再現性の高いデータを提供した.これらの成績を踏まえて3次元心エコーの実験動物への応用について解説する.

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