地理学評論
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霧島火山における草地利用の研究
服部 信彦
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1964 年 37 巻 9 号 p. 488-506

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抄録

九州には雲仙,阿蘇,九重,霧島などの火山が多い.これら火山の斜面の土地利用法に耕地,草地,林地がある.これら利用法の比率に従って,各火山は耕地型,草地型,林地型の三つの型に分れる.雲仙は耕地型であり,阿蘇・九重は草地型であり,霧島は林地型である.このような型が分れる原因は自然的であるとともに社会的である.前者は斜面の傾斜が緩かで広いかどうか,谷密度が大きいかどうかなど,地形や地質に関係する.一方社会的条件も重要である.もし自然的条件が決:定的ならば,土地利用法相互間の割合は不変で固定するだろうからである.従って社会的条件を明らかにすることが必要である.この場合第一に重要なのは土地の経済性である.というのは農民はその土地から最大限の利益をあげるように利用するだろうからである.これまでの調査および筆者によると,林地が最も経済性が高い.これがとくに霧島にをいて草地の林地に変る原因である.しかし霧島に対し,阿蘇では草地があまり林地に変らない.この理由は阿蘇の草地は共同地になっていて,農民はこれを分割,植林することを好まぬからである.霧島では草地も林地も広く国有になっており,このため地元農民がこれを利用することができなかった.
要するに九州の火山がその土地利用からして三つの類型に分れる理由は自然的社会的のあわさったものであり,筆者はこれらの事実を阿蘇と比較して霧島について研究した.

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