新潟県神谷地すべりにおいて周辺の地質調査および電気探査による破壊面深度の推定を行なって,地すべり地形の成因を考察した.地すべり地の上半部に3段の急崖とそれらの間に2つの平坦面があり,段丘地形を呈する.これは従来層すべりの結果形成されたと考えられていた.しかしながら,中位急崖をつくる岩塊は周囲の地層傾斜よりも緩であって,しかも急崖面は地層面を切つている.このことは地すべり運動は後方廻転運動を行なっており,しかも中位および下位急崖は岩塊の廻転面ではなく,廻転によって空間的に上方に持ち上った部分の崩落等によって形成されたことを暗示する.これをたしかめるために電気探査による破壊面深度を探測したところ,平坦面下の破壊面は凹形を示して上の暗示がほぼたしかなことを知つた.したがって神谷地すべりにみられる段丘地形は地すべり岩塊の後方廻転によって形成されたものであり,後方廻転地すべりの典型例がここにみられる.