地理学評論
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四国地方の製炭地域の類型
篠原 重則
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1967 年 40 巻 11 号 p. 601-624

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抄録

本研究は四国地方の製炭業を村落構造との関連において類型的に考察し,同地方の製炭地域の区分とその地域性の解明を意図した.このため,製炭地域の類型化の指標を,製炭業の生産関係—製炭形態—と製炭技術の特性に求めた.これらの事項について,旧町村ごとに代表的製炭集落を1集落選定し,アンケート調査を試みた.その結果,次のような製炭地域が区分された.すなわち, a)四国東南地域, b)四国西南地域, c)肱川流域, d)地方都市周辺山地地域, e)四国山地中軸地域.
各製炭地域の代表的製炭集落について,製炭業と村落構造の対応関係を比較検討した結果,四国地方の製炭地域類型の原型は,和歌山県と大阪府池田地方に見出すことができた.四国東南地域と四国西南地域は和歌山県の系統につらなり,国・公有林が広大であったり,私有林の大山林地主が存在する村落構造と対応して,前近代的な製炭形態が普遍的に残存する.技術的には,大阪市場と技術導入先の和歌山県との位置関係からして,東部から西部に傾斜し,これが両地域の類型をわかつ.肱川流域は池田地方の系統につらなり,林野所有の比較的均等な村落構造と対応して,自営製炭が卓越する.集約的,合理的な製炭体制が確立し,技術的にも進化している.地方市場と結合した製炭地域は,技術的には和歌山県とも,池田地方とも関係しないが,その存在形態は池田地方の類型に近い.四国山地中軸地域は伝統的製炭地域ではなく独自の性格が稀薄である.

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