1967 年 40 巻 11 号 p. 625-643
日本の主要観光地を観光市場構成からみると「大都市型」,「中間型」,「地元型」に分類でき,一般に「地元型」から「大都市型」へ移行するにつれて発展段階は低次から高次へと対応する.ここで高次の発展段階にあると考えられる東京周辺の温泉観光地について分折した結果,戦前においては,各温泉地間の発展段階の差異(発達較差)は大きくなかったが,現時点では熱海をはじめとして箱根,伊豆の諸温泉地は観光地化が顕著であるのに対し,北関東の伝統的温泉地は戦前の発展度に比べて相対的に停滞性で特色づけられた.しかし北関東においても鬼怒川,水上は急速かつ高度な発展をとげた新興温泉地として把握された.そして温泉観光地の発展段階として, I.湯治場, II.休養地, III.休養地+遊覧地, IV.遊覧地, V.温泉観光都市の5段階が考えられた.
このような発達較差形成の一般的外的要因として第一義的には大都市からの近接性,鉄道直通化,道路交通の進展と観光広域化などが考えられるが,さらにこれら交通条件の有利性をふまえた上での中央観光資本(主に私鉄資本)の積極的な観光開発が強く作用していることを知り得た.