仙台における用途地域の制度が一段と明確にされるのは,昭和4年の都市計画に基づく商工・住宅地域の決定以後である.以来,都市の発展に伴って,この用途地域はいくたびか改新されてきている.ところで,これらの指定時において,いつも零細,既存という名のもとに規制の網の目からこぼれ落ちてきたもののなかに,ここでとりあげる中小食品製造業がある.これらはほとんど市内需要という狭域商圏に依存していて,年年拡大・変化する都市活動のなかにあって,それに対応して存続し,あるいはそれに対応できず転廃するなど,都市内部における機能地域の形成からみると,きわめて虚弱な因子であるとみられよう.しかし,それらの位置的変化は都市における工業地域の形成,あるいはその土地利用形態の初歩的段階を解明する一つの足がかりになるものである.
そこで, 1911年~1963年という限られた期間ではあるが,市内における中小食品製造業について業種別・年代別にその分布様式や配置形態を検討してみた.その結果,分布という単一要素での考察であるので綜合的な結論は到底導き出しえないが,都市の発展とその発展自体が内包していく環境要素の変化のなかで,この種の企業が辿っているきわめて起伏に富んだ経済活動の一面が,時代ごとに比較的明瞭に地域に投射され,その分布様式や配置形態にそれぞれ顕著な変化を与えていることが知れた.