地理学評論
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世界における死亡の季節変動形態の研究(第1報)
その緩慢化現象を中心として
籾山 政子
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1969 年 42 巻 1 号 p. 1-18

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抄録
疾病や死亡と季節との関係は随分古くから論じられ,いわゆる“季節病”の存在も周知の事実となった.しかし最近ではその姿-常識的に考えられてきた姿-も大きく変り,従来季節病と呼んできたその名称の本来の意味が消滅しつつある段階にきている.
日本の死亡の季節変動は,昔は夏に高い山のある夏季集中型,夏,冬2つの山のある型,最近は冬に山のある冬季集中型と移り変った.人間の社会的な努力によって,夏山は克服されたのである.だが冬は相対的に高まり,冬季集中はますます顕著になってきた.
世界の国々の死亡の季節変動形態はいろいろあるが,それらはある程度,日本の歴史的変遷の姿と対応している.一方,北欧やアメリカには今日,変動の“緩慢化”現象があらわれてきた.これは冬季集中を経過したあと形成された,より進化した形態と考えられる.しかし現在の諸形態が形成された自然的,歴史的,そして社会的背景はそう簡単には究明できない.
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