地理学評論
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都市・農村関係に関する一考察—新潟県十日町織物生産地域の分析—
野沢 秀樹
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1969 年 42 巻 1 号 p. 19-40

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抄録
地域の基本構造を.市と農村の諸関係において捕えようと試みたもので,ここではその諸関係の一要素である工業生産活動についてのみとりあげた.対象地域は新潟県十日町市とその周辺である.この地方は高級絹織物地=域として全国に名声を馳せているが,その織物生産地域の構造を生産の構造的側面とその空間的側面について分析した.前者については,.市工場の構造,及び農村が.市の工場と関係を結ぶに至った要因を農村自体の構造の分析を通して明かにした.後者については生産のイニシヤティブをもつ.市の親工場とそれに従属した農村の出機との関係,及び労働力調達範囲の空間的組織を明かにした.また.市の側からの分析だけでなく,農村の側の反応をみるために,地理的位置と出機導入率を考慮:しいくつかの類型別に若干の部落について,インテンシィブな調査を試み,それぞれ以下のような結果をえた. 1. 都市部に集中する工場は3社に代表される大企業とその他の零細小企業に分類される. 2. 農村部の出機導入は農業との関係より,農家自体の人口構成によっている.3.農村の出機導入圏は.市中心の距離からみて,中間地帯にもっとも導入率が高い. 4. 3社に代表される出機支配圏は,相互に空間的に競合しながらも,それぞれの支配領域を確立している. 5. 労働力調達範囲も上と対応するかたちで存在する, 6. 農村の出機導入の類型にはそれぞれ移行形態が存在する.
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