地理学評論
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八重山諸島におけるマラリアと住民
千葉 徳爾
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1972 年 45 巻 7 号 p. 461-474

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抄録

1) 八重山諸島のマラリアは3日熱のほか,わが国に稀な熱帯熱マラリアを含む.著者はその歴史的消長過程を手がかりとして,風土病についての地域の諸構成要素の連関を分析し,やや詳しい記述を試みた.
2) この地域では,日光の照射を必要とするnopheles minimusが,熱帯熱マラリアの強力な媒介者として山麓の渓流・湧泉に棲息し,近世の開墾の進展と津波災害にもとつく森林の減少にともなって,日光を忌む比較的弱い媒介者, Anopheles ohamaiと交代した.近世中期以後にマラリアによる廃村化が急速に進行した1因は,かような生態的作用系列によると推測される.
3) 八重山諸島のマラリアのEndemicareaに,あえて住民を立入らせ,Pandemicな流行を出現させた作用は,近世から明治中期までは人頭税,太平洋戦中の軍による疎開命令,その後には人口過剰による移民促進という,地域外から及んだ社会的作用系列に属する. Endemicareaの地域的構造は,薬品によるマラリア原虫駆除の完了によっても,なお厳存していて,将来何かの原因でマラリア原虫が導入されれば, Pandemyが再現される可能性がある.

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