2019 年 39 巻 3 号 p. 525-529
症例は33歳の女性。半年前より腹痛発作を繰り返していたが放置し,腹痛増悪と嘔吐を主訴に当院へ紹介入院となった。腹部CT検査で腸重積像を認め,その先進部に脂肪組織と等吸収値の腫瘤像を認めた。小腸脂肪腫による腸重積と診断し腹腔鏡下に手術施行した。腹腔内で鏡視下に重積部分を整復後,臍に小切開をおき小腸腫瘍を創外で確認した。多発する大小不同の弾性軟な腫瘍を一塊として空腸に触知し,その部分の小腸切除を施行した。切除標本でも黄色の粘膜下腫瘍が多発密集し,病理組織診断はlipomatosisであった。術後1年6ヵ月経過し重積の再発は認めていない。小腸lipomatosisのなかでも,当症例のように多発した脂肪腫が限局した範囲の小腸に密集する形で存在する症例はまれであり,若干の文献的考察を加え報告する。