地理学評論
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福島県における牛乳産業の展開
斎藤 功
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1974 年 47 巻 2 号 p. 73-84

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抄録

福島県は戦前の馬産地から戦後の牛乳生産地域へと大きく変わってきたが,乳牛は明治初期,搾乳業者によって導入され,旧城下町を中心に波及していった.また,明治政府の勧農牧畜策によって設立された岩瀬牧場は搾乳業者への貸付牛を通じ牛乳産業の発展に貢献した.しかし,この貸付牛の存在が農家での乳牛飼育を遅らせた一因になったとも考えられる.
昭和12年,森永東北農産株式会社(現森永乳業福島工場)が地元民により誘致され,福島盆地を中心に酪農が展開した.この会社の主導の下で乳牛は外延的に波及し,戦後,酪農が広範に普及した.このことは,また福島県の酪農が森永乳業の独占的加工原料乳地帯として形成されることを意味した.
首都圏における飲用牛乳消費量の増大を背景に,昭和32年以降,協同・明治・雪印乳業の進出により,福島県南部は東京集乳圏に編入されたが,福島県における生乳取引シェアの過半数を森永乳業が占めている.したがって,福島県は市乳圏と原料乳地帯の境界,つまり東京集乳圏の限界地帯として位置づけられる.本稿はこの点を解明したものである.

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