抄録
アドリア海岸で最もボラが卓越するセー二地域と,内陸部で最もボラが強いアイドフシチナ地域で,風向と風速の詳しい観測を実施した.その結果,判明した事実は次の通りである. (i) ボラは強いときには,斜面全域で始まり,気温の降下量も大きい. (ii) 気温の降下量は峠部で大きく海岸部では小さい. (iii) セー二の結果では,海岸の山麓部で風速が急増するのは,峠の風速が11~14m/sの場合である. (iv) それ以上の風速の場合は風速の増加は小さい. (v) 斜面に沿う気温垂直傾度が不安定 (1°C/100m以上)の場合,峠の風速に対する山麓の風速は一般に小さい. (vi) 峠または稜線から風下へ水平距離で5~6kmの位置でボラが最強となることが多い. (vii) 山麓に沿って走る強風軸は,風が強いときほど,山麓から風下側に移動する. (viii) 偏形樹などを指標として調査した風の分布は,風が強い場合,弱い場合などの複合型の分布を示している.