地理学評論
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尾瀬ヶ原南稜における風による偏形樹の成因およびその分布の示す意味について
その総観気候学的方法による検討
小川 肇
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1974 年 47 巻 7 号 p. 437-461

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抄録

山地の風の分布を把握するための有力な手段の1つとして,風による偏形樹がある.これを用いる際に当面する重要な課題は,その成因の検討を厳密に行ない,それが示す風の内容を明確におさえることである.筆者はその第1歩として,尾瀬ヶ原南稜の針葉樹の偏形を対象にし,その成因およびその分布の示す意味を総観気候学的方法により検討した.
その結果, (1) 当地域の偏形樹は,冬期卓越風ではなく,主として厳冬期の低温で比較的乾燥した風の乾燥化作用により形成されたこと, (2) 多量の降雪を伴う冬期卓越風は,その形成の抑制要因として働くこと,が明らかにされ, (3) この2点から表日本の山地の偏形の形成要因は冬期卓越風であることが想定された.また (4) 偏形分布は, (1) に述べた風の分布を表わしているが,その風の,同一条件下の局地的分布を示しているとはいえないこと,したがって偏形樹を用いて山地の風の小気候を論ずる場合には,その分布の同時性について十分考慮すべきであること,が指摘された.さらに (5) 偏形分布と積雪・植生分布との“くい違い”の原因についても明らかにされた.

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