地理学評論
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アルザスの村落における農業経営の規模と形態 (1660~1942)
大嶽 幸彦
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1974 年 47 巻 7 号 p. 426-436

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抄録

ストラスブールの北西10~20kmにある4村の例をとり, 17世紀中頃以後の農業経営の規模と形態の変化を追求し,大農経営の存在形態を明らかにしようとした.
1660年, 1740年の農業経営形態の分析からは,村落居住者の中における農業経営体間の規模の差異,特に大農経営と零細・小農経営との階層差が明らかとなった.
次に, 19世紀後半から20世紀中頃までの農業経営規模を追ってみると,雇用労働力に依存した大農経営がつねに存在した.一方,小農経営は次第に減少した. 10ha以上の大農経営はそれほど減少していない. 1942年の経営規模は中農標準化傾向をもっていたといってよい.農業経営体が上・下の階層によりはっきり分化することは,プロテスタント村においてよりもカトリック村においての方が著しいことが明らかとなった.これはプロテスタント村で一子相続の慣習を堅持しなくなったことと,カトリック村において大農が,昔の農業日雇の社会的上昇を抑える傾向があったことによるものである.

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