地理学評論
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ヴュルム氷期における日高山脈周辺の地形形成環境
小野 有五平川 一臣
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1975 年 48 巻 1 号 p. 1-26

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抄録
日高山脈の氷河地形,周氷河作用による斜面地形,十勝平野の地形面とその構成物質の分析,化石周氷河現象,花粉分析などを用いて,ヴュルム氷期における日高山脈,十勝平野の地形形成環境を考察した.日高山脈のヴュルム氷期は二亜氷期(ポロシリStadial, トッタベツStadial) に分けることができ,地形形成環境はそれぞれの時期で大きく異なっている.
1) ポロシリStadial: 日高山脈での氷河最大拡張期.泥質細角礫からなる大量の岩屑が谷壁斜面から河床に供給され, filltop段丘面の形成,十勝平野での扇状地の拡大が起った.段丘礫径は小さく,低円磨度で日高層群起源の礫が多い.末期にはice-wedge cast, 多くのインボリューションがみられる.
2) トッタベツStadial: 氷河は面的にも量的にも著しく縮小した.谷壁斜面での物質移動はクリープ性のものに変わり,河床への岩屑供給は激減した.十勝平野での扇状地形成は小規模で,内陸砂丘の形成とice-wedge cast状の構造,インボリューションなどがみられる.
大局的には,ポロシリStadialはある程度の降水(雪)量をもつ冬季湿潤・夏季冷涼の気候,トッタベツStadialは乾燥(特に冬季)・寒冷な気候であったと推定される.
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