抄録
都市化の原動力が,「資本」であることは従来から考察されてきた.しかし,わが国では地理学の立場から資本を地域現象としてとらえた研究はほとんどなされなかった.本稿は,金融の地域構造に関する地理学的研究を目ざし,わが国において,資金の蓄積と資金の投資がいかに地域的に分布してきたかを経年的に変化を追うことを研究目的とした.わが国には,各種の金融機関が存在するが,今回は営業区域が限定され,地縁的な中小金融機関である信用金庫を選んだ.信用金庫による金融圏の全国的分布は,3大都市圏に集中し,それに反して農村空間での金融圏の分布は著しく粗であり,金融圏の分布には地域的差異が著しい.また,信用金庫の各金融圏は,年次的に著しく変容し,規模の大きな都市に支店が集積する傾向にあり,それらの都市を中心に金融圏が重層し,金融圏のブロック化が進行しつつある.