地理学評論
Online ISSN : 2185-1719
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
低地の微地形と海水準変動(2)
吉野川下流平野および四万十川河口平野
阿子 島功
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 51 巻 8 号 p. 643-661

詳細
抄録

沖積低地面の微起伏を考古学的遺跡・遺物の出土状況から編年的にみるとき,低地面の微起伏がつくられた一連の過程は縄文期以降の海水準変動史とよく対応していることが明らかになった。地殻変動や気候変動に伴う流域の流出状況の変化などの資料はないが,河川沿いの微地形から知られる基準面変動の時期と相は,海岸で推定されているそれとよく対応しているのが注目される.
吉野川下流平野の縄文海進時の河口より上流側を例にとり,従来の低地の微地形面の区分に対応させてそれぞれの編年試案を述べると次の通りである.自然堤防など微高地面ば縄文期の高水準に対応する堆積頂面であり,後の海退によって河床との比高を増したが,未だ完全に離水していない面浅い旧河道面状あるいは後背低地面状をなす中位面は,縄文期後半・弥生期~平安期の低海水準に対応する浅谷が埋積された面.低位面は現河道面とほぼ同一水準をもち未だ埋積されていない旧河道面であり,少なくとも藩政期以降あまり変化していない.
四万十川河口平野の縄文期海進時の河口より下流のいわゆる臨海低地帯における自然堤防は,縄文期後半~弥生期の小海退によって乾陸化したかつての浅海底面(繩文海進時の海底)へ,河川の堆積場が前進して,遣跡を埋没させつつ微高地をなしたものである.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top