地理学評論
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大松山の斜面上における放射冷却と接地逆転
中村 圭三
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1980 年 53 巻 12 号 p. 758-768

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抄録

1978年7月29日から8月1日までの4日間,長野県菅平の大松山(1,648.7m)の北東向斜面上で微気候の観測を行なった.正味放射量と逆転度(地上1.3mと0.3mの気温差,正の場合が逆転)および冷却の垂直差(地上0.3mと1.3mの気温降下量の差,下層からの冷却が正)についての詳細な解析結果から,斜面上における放射冷却により強い接地逆転の形成が進行する地域を,より正確に把握することを試みた.その結果, 1978年7月30日の日没前後の測点3 (1,320m)と測点5 (1,275m)における正味放射量と逆転度は正の相関を示し,また冷却の垂直差の積算値も正の値であった・これらの結果は,この地域の接地大気が下層から冷却されたことを意味する.以上のことから,日没前後の大松山の斜面上で,放射冷却による接地逆転の形成が最も進行するのは,測点3から測点5付近にかけての地域であると判断される.その理由としては,この地域が斜面外からの移流大気の影響を受けにくい場所に位置していることが考えられる.

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