抄録
地上から850mb面(高度約1,500m)までを気候学的大気境界層と定める.輪島において開発された地上気象要素(気温・水蒸気圧・全雲量)によるパラメータ化を全国的に汎用して,国内82地点における同層の長波放射収支の平年(1941~70年)月平均値を推定する.その結果,日本の大気境界層は,年平均では全域において長波放射冷却されているが,冬季には,日本海沿岸地方では加熱されていることが示される.さらに,調和解析によって,大気境界層の長波放射収支の季節性およびその地域性を検討する.分散,各調和項の振幅およびその位相などの面において,日本海側と太平洋側,特に,関東およびその周辺地域と他域との間に著しいコントラストが存在することが明らかにされる.大気境界層の長波放射収支の年変化曲線の類型化を試みる.その結果,各タイプの日本国内における分布には地理的秩序が認められ,日本は8種の気候区に区分される.