地理学評論
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有明海北岸平野における最終間氷期以後の地形発達史,その定量的研究
杉谷 隆
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1983 年 56 巻 6 号 p. 403-419

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抄録
沈降域に発達する海岸平野の最終間氷期以後の発達史を,埋没している古地形を復元することによって実証的に明らかにし,さらにこれに基づいて平野の埋積過程を,定量化された数値によってとらえることを試みた.研究地域には有明海北岸平野を選んだ.
まず,平野のほぼ全域にわたるボーリング・データを,地形学的な吟味のもとに解析し,後期更新世以後の層序を合計13層に区分した.これに基づいて,とくに堆積原面がどのように形成されたかに注意を払いながら,地形学的考察を加え,最終間氷期以後の地形発達史を解明した.
最終間氷期には,この平野は内湾性の堆積物によって埋積され,平坦面が形成された.その平坦面は,約0.2m/1,000年の速さの沈降運動の影響を受けて埋没していき,現在は現海面下20mの開析された地形面として残存している.その平坦面形成後の古地形は,約7万年前・約3万年前・最終氷期最大下刻期・約1万年前のものがそれぞれ復元される.
さらに,この平野の最終間氷期以後の埋積過程を定量的にとらえるために,以上の結果に基づいて,各堆積物の堆積時の体積と残存する体積を推定し,最終間氷期以後の沈降量も同じく体積的に評価して考察に加えた.定量的視点からは,この平野の発達史は次のように結論される.最終間氷期から現在の後氷期にいた,る,氷河性海面変動との関連からは,高海水準期から次の高海水準期までの1周期間に,沈降運動の影響は6.4km3に達した.最終氷期の相対的な低海面期には,当時の山地からの岩屑供給量が現在のそれと大差ないものとすれば,平野内で起きた浸食量をはるかに上回る量の岩屑が,平野を通過してより下流へ流送されていき,平野では主に沈降運動の影響が蓄積していった.沖積層は,以上のようにして形成された器を急速9に埋積した堆積物で,その体積5.2km3は,前述した長期間の沈降量6.4km8の約80%という大きな値を占めている.
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