理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

テーマ演題 口述
リズムに合わせた足踏み運動の正確さと身体機能の関係
─動作リズム120beatの検証─
小栢 進也樋口 由美岡本 健佑淵岡 聡
著者情報
キーワード: 足踏み, リズム, 加齢
会議録・要旨集 フリー

p. Cc0378

詳細
抄録
【はじめに】 転倒経験者はリズムよく歩行できず一歩にかかる時間の変動が大きくなると報告されている。この歩行リズムは足踏みや自転車動作のリズムと類似しており、様々な身体動作に共通する身体動作リズムがあるとの仮説が近年提唱されている。過去の研究は若年者を対象としており、加齢により身体動作リズムが変化するのか、身体動作リズム低下とケイデンスが関連するのかは明らかとなっていない。そこで我々は足踏み動作にて身体動作リズムの検討をし、歩行との比較を行った。【方法】 対象は若年者15名(年齢19.3±1.2歳、男性3名、女性12名)、健常高齢者10名(年齢76.4±7.2歳、男性2名、女性8名)、虚弱高齢者11名(年齢76.0±7.5歳、男性3名、女性8名)とした。若年者および健常高齢者はADLが自立しており、下肢に運動を制限する障害がない方とした。虚弱高齢者は日常生活に介助が必要であるデイサービス利用者とし、歩行補助具なしで歩行が自立している方を対象とした。また、運動麻痺や整形疾患にて明らかに身体機能に左右差がある方は除外した。実験では加速度計(サンプリング周波1000Hz)を使用した。加速度計を右足部に装着し、座位足踏みおよび歩行時における垂直方向の加速度を計測した。足踏みの計測では、椅子に腰かけ、電子メトロノーム(Korg社製)の音に合わせて左右の足踏み運動を行った。電子メトロノームのテンポは100,110,120,130,140bpm(beat/minute)に設定し、順序をランダムに行った。また、歩行の測定では11mを快適な速度で歩行し、ストップウォッチにて中間5mの歩行時間を計測した。加速度計のデータ解析は加速度がピークになる点を床に接地した時点と規定し、ステップのタイミングを計測した。始めの3ステップを調整期間とし、続く6ステップ5区間の時間を解析値として用いた。5区間の時間から平均値および変動係数(CV)を求めた。歩行では平均値からケイデンスを算出した。解析には二元配置分散分析を用い、足踏みCVにおける群間およびテンポの変化を検討した。さらに、特定のテンポでの群間差を比較するため多重比較Scheffe法を用いた。有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 全ての被験者には実験の内容を説明し、書面にて同意を得て実施した。【結果】 足踏みCVは群間・テンポの主効果および交互作用を認めた。若年者は足踏みテンポに関わらずほぼ一定のCV(100bpm:2.3%, 110bpm:2.3%, 120bpm:2.4%, 130bpm:2.5%, 140bpm:3.2%)であった。一方、健常高齢者では120bpmで若年者と変わらないのに対して110bpm,130bpmでやや高い値を示した(100bpm:2.5%, 110bpm:3.2%, 120bpm:2.5%, 130bpm:3.1%, 140bpmt:4.0%)。虚弱高齢者も同様に120bpmでは小さいが、110bpm, 130bpmで高くなる傾向が顕著にみられた(100bpm:4.8%, 110bpm:6.5%, 120bpm:3.4%, 130bpm:4.9%, 140bpm:4.3%)。多重比較の結果、110bpmで虚弱高齢者が若年者および健常高齢者、130beatで虚弱高齢者が若年者より有意に高い値を認めた。しかし、120bpmでは有意差を認めなかった。歩行時間は若年者4.1秒、健常高齢者4.0秒、虚弱高齢者5.6秒、ケイデンスは若年者120歩/分、健常高齢者122歩/分、虚弱高齢者、111歩/分、歩行時CVは若年者3.6%、健常高齢者4.9%、虚弱高齢者6.3%であった。【考察】 足踏みのCVは120bpmで群間に差を認めないのに対し、その前後110bpmおよび130bpmで高齢者が増加した。この120bpmは若年者および健常高齢者のケイデンスに一致することから、歩行と座位足踏みには120bpmという同一の身体動作リズムがあると考えられる。身体動作リズムとずれが生じる110や130bpmでも若年者は合わせることができるが、身体機能の低下した虚弱高齢者では調節することができず、変動が大きくなったと予想される。身体動作リズムは身体機能が低下しても変わらない。虚弱高齢者は身体動作リズムと歩行ケイデンスが一致しないことが明らかとなった。【理学療法研究としての意義】 本研究では適切な身体動作リズム120bpmがあることを表している。この結果は歩行時CVと転倒の関連性を解明する一助となり、身体運動リズムに介入する新たなトレーニング方法開発へつながるものである。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top