1975年の農業土地生産性の1:km2メッシュデータを用い,関東地方の農業空間構造を分析した.細かな空間的スケールのメッシュデータを利用することによって,従来の諸研究が提唱した理念モデルや,地域農業の実態についての経験的考察にもとつく現実把握を,広域的に検証することに重点を置いた.
まず,農業土地生産性を階級区分してコンピュータマッピングし,この分布パターンを把握した.次いで,都心からの距離と農業土地生産性の対応関係を方位別に検討した結果,各方位は波状型,距離逓減型などの6種類に分類された.同類型に属する方位が空間的に連続する傾向がきわめて強く,関東地方は,それぞれ卓越した空間的変化類型によって特徴づけられる5個のセクターにまとめられた.これらの結果を統合することにより,農業土地生産性からみた関東地方の農業空間構造に対して,京浜地帯を核とする同心円状パターンとセクターごとに独特の変化傾向という2要素を盛り込んだ分布モデルが提示された.