地理
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除蟲菊の主要生産地の成立過程
菊地 利夫
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1940 年 3 巻 2 号 p. 171-184

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抄録

一、除蟲菊は始め渡來作物として、次いで工業原料作物として、更に輸出農産物としてその性格を展開するに從つて、和歌山縣・瀬戸内の諸縣が南方主要生産地として、北海道北半部が北方主要生産地として成立した。
二、除蟲菊の立地事情は除蟲菊生産てふ新事業の奨勵者と新事業の開拓者との相互接觸と、除蟲菊の植物的特質と密接な關係を持つ自條的條件との結合・一致である。
三、除蟲菊の主要生産地成立を助長した條件は加工技術の進歩と製品・乾花の市場の獲得とによる需要の増加と、除蟲菊が農業經營内の立地競爭作物と代替せしめられたこととである。
四、除蟲菊相場が高騰するや、南方主要生産地では同期作物の生産地を侵蝕して、北方主要生産地では新墾地をもつて、除蟲菊の生産地を擴張してゆく。
五、南北兩主要生産地間の大なる自然的距離は、除蟲菊市場に對する自然の攪亂力を減少せしめてゐる。
六、北方主要生産地に形成された從來の阪神工業者の形成した販賣組織の中に、生産者にとつて不合理であつた二點を是正すべく、産業組合が形成した販賣組織が進出してきた。
終りに臨み本研究のために、種々の御教示を賜つた高等師範學校の地理學教室・農學教室の諸先生へ、又札幌・廣島・和歌山・香川の諸縣立農事試驗場の方々へ、厚く感謝の意を捧げる。又大塚地理學會大會に發表のとき諸先輩の懇切なる御教示を受けたことは論者の感激に堪えざる所である。

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