抄録
現在の環境下で発達を続けている腐植質火山灰土壌(黒ボク土壌)について,その土壌腐植特性からみた生成環境推定の試論を行なった.日光男体火山東麓から大谷川,鬼怒川沿いの洪積台地上に発達する厚い腐植層を対象に,腐植層の暗色度,腐植の集積度および腐植化度に着眼して,土壌腐植特性に関する室内分析を行なった.その結果,腐植層の特性にみられる地域性は,現在の気候の空間的分布,降灰量,腐植層直下の母材による水分条件等に規定されていることが明らかになった.この中で,腐植層の暗色度と腐植の集積度にみられる極大域は;'腐植の集積を促進する局地的な生成環境によるものと考えられるのに対し,腐植化度の地域性は標高に伴う気候の空聞的分布に従っていると考えられる.この試論をもとに,埋没性腐植質火山灰土壌の生成環境について考察していくことが今後の課題である.