1987 年 60 巻 5 号 p. 323-346
本稿は, “Science of Geography” (1965) を手がかりにして,それの実質的まとめ役であるAckermanの主張と,戦後アメリカ地理学をとりまく社会環境に焦点をおき,計量革命の再検討を試みた。その結果,戦時地理学の反省に伴う系統地理学の重視,地域概念の破産,代替主導概念である空間のとりこみ,地理学の学問的地位向上の欲求,政府支給の研究費調達システム下での研究体制の確立が,計量分析の導入による地理学の科学化に向かわせたことがわかった。こうした科学化の動向を巧みにリードしたAckermanの試みは,同時に地理学の「体制化」(広重, 1973) につながるものであった.