都市近郊の農業は高い地価水準や,都市側からの土地利用規制,あるいは遠隔産地との競合など,困難な営農環境のもとにある。一方,都市側からは,防災上必要なオープンスペースや,公園・緑地の代替物として,また,将来の都市施設用地として,その保全策が講じられている。本稿では,横浜市が農業専用地区に指定した鴨居・東本郷地区と無指定の小机地区における農家経営の比較を通して,都市農業の存立条件,および農地保全の諸条件について考察した.都市農業が存続する上で,農家経営に占める不動産経営の比重の大小,農業労働力の質,独自の生産物販売経路の確立が関わっている.都市化地域の農地保全には,行政側の保護施策が不可欠である。また,農家側からは,次の3点,農業経営と不動産経営の両立の可能性を有すること,脱農化傾向にある農家も残る農地を資産保全的に経営する段階に達していること,高度な農業生産を担う中核農家が存在すること,が指摘される.
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