地理学評論 Ser. A
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札幌における認知地図の相対的歪み
若林 芳樹
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1990 年 63 巻 4 号 p. 255-273

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抄録

本稿は,距離評価法と描画法によって測定された,札幌における大学生の認知地図の相対的歪みについて,若林(1989a)の方法を一部修正して,計量的分析を行なったものである.その結果,札幌の大学生の認知地図は,現実の地図との適合度が比較的高いことが明らかになった.ただし,距離評価法による結果は,認知地図と現実の地図との適合度よりも経路距離空間とのそれの方が高いのに対し,描画法では,現実の地図からのずれも個人差も比較的小さいという調査方法による違いが現われた.距離評価法による結果が示唆する認知地図の非ユークリッド性については,MDS(多次元尺度構成法)によって布置を求める際に,ミンコフスキー距離を当てはめて検討したところ,市街距離との適合度がもっとも高くなることから,対象地域の格子状街路が距離評価に影響を与えているものと推定される.このような調査方法による結果の差異は,人間が環境の情報を獲得し,再生するまでの情報処理過程の違いによるものと解釈される.

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