抄録
沖縄県のサトウキビ作は生産者価格抑制政策のもとで,収穫機械化を軸とした経営の合理化を迫られている.このことは,とりわけサトウキビ作・糖業を主産業とする離島部において切実な問題となっている.本稿では,県内で唯一の本格的な収穫機械化地域である南大東島を取り上げ,1988年の北ムラでの調査を中心にサトウキビ作経営の実態を考察した.その結果,収穫機械化が現状では必ずしも経営の合理化に結び付いていないことが明らかになった.収穫機械化後の南大東島のサトウキビ作経営は,資本装備の著しい増大と土地基盤への莫大な投資,新植や肥培管理に要する栽培経費や労働力投下の増大によって特徴づけられる.しかしこれまで,資本装備の利用度をいかにして高あるか,従来の粗放的な栽培技術体系から労働集約的,資本集約的な栽培技術体系への転換をいかにして図るかといった問題点の検討が十分になされてこなかったために,農家経営を圧迫する結果になっている.収穫機械化による重労働からの解放は,若者がサトウキビ作に従事するための最低限の条件と考えられる.しかし同時に,収穫機械化が経営の合理化に結び付くものでなければ,サトウキビ作は次第に将来の担い手を失い,沖縄離島の主産業としての地位を低下させていくことになるであろう.