地理学評論 Ser. A
Online ISSN : 2185-1735
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
関東地方における自動車交通圏の類型ならびに類型の分布秩序
奥井 正俊
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 64 巻 3 号 p. 167-192

詳細
抄録

関東地方の都市を焦点とする自動車交通圏の類型および類型の分布に見出される秩序を,都市の性格との関連において考察した.都市と周辺地域の間で発生する自動車交通量の距離逓減をパレート等式により特定化し,各都市の交通圏について規模と傾度の2属性を取り上げ,交通圏を設定した.規模属性は交通圏の輪郭を円形とする場合の円の半径また傾度属性は距離逓減の変化率にそれぞれ等しく,交通圏の特徴を,その広がりとともにいわゆる需要円錐体の形状を把握することにより,2側面から把握しようとした.規模と傾度の測定値を組み合わせると,交通圏は8類型に区分された,類型区分の指標は中心都市の性格を反映していることから, 8類型の差異をもたらす都市特性の諸要因を取り上げ,これらを判別関数法で検証した.その結果,都市規模,近隣都市との摩擦,中心機能,ローカルな中心性,自動車の比重という諸要因に対応する都市特性の説明変数は,8類型の差異を十分に判別できることが明らかとなった.そこで,説明変数の測定値からみて各都市が帰属すべき交通圏の類型をベイズ最適判別の方式により決定し,この理論的類型の分布を考察した.理論的類型の分布における基本的秩序として,東京23区を中心とする同心円構造が見出された.この同心円構造は,核心地帯, 30~50km圏, 40~70km圏, 70km圏外の4地帯からなり,各地帯を占める交通圏の類型は,中心都市の性格を反映して相互に異なる.こういう4地帯構造の図式は,関東地方の地域構造を理解するためのモデルにほかならない.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top