地理学評論 Ser. A
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層状に堆積した斜面における降雨流出プロセスと地中水の貯留機能
丸井 敦尚
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1991 年 64 巻 3 号 p. 145-166

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抄録

森林源流域の降雨流出過程においては,地下水流出過程がその支配的な要因であることが知られている.本研究では,従来より指摘されてきた地形や地質の降雨流出現象に対する影響に加えて,流域の有する貯留機能と地下水流出過程との関係を明らかにし,これまでブラックボックスとして取り扱われることの多かった山体内部における降雨流出時の地中水の挙動を解明した.
層状に堆積した斜面においては“地下水リッヂ”と呼ばれる特徴的な地下水の貯留が生ずることが明らかとなった。このため,限定された地層内には間隙空気が封入・加圧される.その間隙空気の圧力増加は,降雨開始以前に斜面の内部に貯留されていた地下水体に伝播され,地下水が降雨に応答して速やかに流出する(押し出される)ものと判明した.層状に堆積した斜面においては,斜面内部に形成される地下水リッヂが降雨時の地表流発生に大きな役割を果たすことが明らかとなった.

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