地理学評論 Ser. A
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夏季の都心部周辺における気温分布特性に関する数値実験
藤野 毅浅枝 隆和氣 亜紀夫
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1996 年 69 巻 10 号 p. 817-831

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抄録

東京と周辺部の夏季の風系を三つに分け,それぞれ異なって形成される気温分布に対する都市の効果を見積もるために数値計算を行った.はじめに,都市の効果として土地利用と人工排熱の分布を考慮した結果,夜間ではどの風系においても大手町付近で高温域が現れ,都市のヒートアイランド現象が再現された.日中,北東風が卓越する風系では大手町付近の高温域が維持されたが,海風や南風が卓越する風系では高温域は大手町より風下の近郊で現れた.次に,それぞれの風系において都市の効果を取り除いた場合の計算を行った.その結果,北東風が卓越する場合では大手町や周辺の近郊での間で気温差はなく,都市の効果を考慮した場合と比較すると,それぞれの地域における土地利用や人工排熱の気温変化に寄与する度合いを計ることができた.海風や南風が卓越する場合では,気温分布の形は都市の効果を考慮した場合と同じ傾向にある結果が得られた.この場合では背景にある地形の影響により,大手町のような最も熱排出の多い地域でも日中の気温に対する都市の影響は小さいことがわかった.したがって,都市の熱環境評価には,まず全体像をとらえることが重要である.

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