本稿では,異なる形態の砂州地形が発達する七つの地域を対象にして,有孔虫化石群集の変化から砂州による内湾の閉塞過程を推定した.さらに,従来の研究成果を加えて,日本の完新世における砂州地形発達の考察を行った.その結果,砂州地形の形成は,現在の形態にかかわらず,完新世前半の海面上昇期に始まっていたが,砂州による内湾の閉塞が始まる時期および完了する時期には,地域差が認められることが明らかになった.
また,低地遺跡の分布が明確にされている駿河湾沿岸の二っの低地において,砂州地形が完成した時期と,そこが人間活動の場になる時期との間には,数千年の時間間隔が存在することがわかった.