地理学評論 Ser. A
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73 巻, 5 号
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  • 松原 彰子
    2000 年 73 巻 5 号 p. 409-434
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,異なる形態の砂州地形が発達する七つの地域を対象にして,有孔虫化石群集の変化から砂州による内湾の閉塞過程を推定した.さらに,従来の研究成果を加えて,日本の完新世における砂州地形発達の考察を行った.その結果,砂州地形の形成は,現在の形態にかかわらず,完新世前半の海面上昇期に始まっていたが,砂州による内湾の閉塞が始まる時期および完了する時期には,地域差が認められることが明らかになった.
    また,低地遺跡の分布が明確にされている駿河湾沿岸の二っの低地において,砂州地形が完成した時期と,そこが人間活動の場になる時期との間には,数千年の時間間隔が存在することがわかった.
  • 浜田 崇, 菅野 洋光, 岡 秀一
    2000 年 73 巻 5 号 p. 435-447
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    富士山北西斜面の森林限界付近において気象観測を実施した.森林帯の上限(C地点)および綾性化したカラマツのパッチ状群落出現部 (B地点)では気温および地温樹木限界付近(A地点)では地温および日射量を測定した.1994年7月から1年間の観測結果に基づいて樹木にとっての気候環境について考察した.B・C地点は暖かさの指数からみて森林の成立は可能である.日最低気温が0°C以下の低温な期間はB地点で約9カ月,C地点で約8カ月であった.土壌の凍結期間はA・B地点で約5カ月,C地点で約3カ月であった.B地点における凍結期間の終了が最も遅くまた長い.北西斜面は風衝地のため冬季の積雪深は1mを大きくは上回らないだろう.B地点とC地点との間には冬季の地温に顕著な相違があったことから,土壌凍結が調査地域の森林限界の形成に関わっている可能性がある.
  • 宮本 昌幸
    2000 年 73 巻 5 号 p. 448-458
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    雪田における岩石の物理的風化の強度分布を検証するために,大雪山小泉岳北東の残雪凹地において,安山岩の破砕礫の分布を調査し,消雪過程との関係を考察した.調査地内の121地点において,1m×1m方形区内の25個の礫について,破砕の有無を判別した.破砕礫は,強風砂礫地より残雪砂礫地に多く分布する.その中で破砕礫が最も多く分布するところは,残雪が越年する年の9月に残雪が消滅した区域に相当する.さらに,この時期の融雪水の流路にあたる地点でも,破砕礫は多く分布する.残雪周縁や融雪水の流路中では,礫は凍結破砕に必要な水分の供給を多量に受ける.したがって,破砕礫が多く分布するところは,このような豊富な水分供給と凍結によって凍結破砕に有利な環境にあると考えられる.一方,消雪が最も遅い残雪砂礫地の中心部では,破砕礫はやや少ないが,これは越年する残雪の断熱効果のために,地表面は秋季の頻繁な凍結融解を受けにくいためである.
  • 小笠原 洋子, 野口 佳一
    2000 年 73 巻 5 号 p. 459-467
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    日記中の天気記録には,日記記主の主観や観測場所・時刻が明記されていないといったあいまいさが反映されている.従来,古日記を利用した気候復元では,これらのあいまいさの影響を排除して復元する方法が検討されてきた.本研究では,日記記主の主観に起因するあいまいさを包含して推定気温を示す手法を検討した.ファジィ線形回帰式を導入すると,可能性としての幅を持たせて気温の推定値を表現できる.
    冬季の京都について,1カ月の降雪日数と各月の平均気温との関係を調べた.その結果, 1・2月において両者の間に高い負の相関関係が存在することが確認された.3種類の日記から得た京都の天気記録を利用して,この関係を応用した降雪日数による気温推定を行った.1856年から1865年を対象期間とし,ファジイ線形回帰式を導入して1・2月の月平均気温を推定幅を持たせて復元した.
  • 2000 年 73 巻 5 号 p. 468-472,479
    発行日: 2000/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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