抄録
栃木県喜連川丘陵にみられる谷壁斜面は,遷急線に基づいて,上位よりI~IVの四っの斜面単位に分類される.これらの斜面単位間および斜面単位と河成段丘面の間の切合い関係,丘陵地内小河谷の谷床縦断形と河成毅丘面との連続性,複数の斜面単位で構成される谷頭部の地下構造,斜面単位を被覆するテフラ層序,化石ガリー地形の編年などを総合的に検討した.その結果,各斜面単位1~Nは,それぞれ(1)酸素同位体ステージ5を大きく遡る時期,(2)ステージ5,(3)ステージ3,(4)ステージ1に開析斜面として形成されたものであり.,形成後にさまざまな修飾を受けてきたと推定された.現在みられる谷壁斜面は,形成時期を異にする斜面単位が組み合わさって構成されており,斜面単位間の境界である遷急線は過去の開析前線に起源を持っ.