Geographical review of Japan, Series B
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氷河・周氷河地形による最終氷期の日本列島の古気候の復元
小野 有五
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1984 年 57 巻 1 号 p. 87-100

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抄録

氷河・周氷河地形にもとついて最終氷期の日本列島の古気候の復元を行なった.日本列島の山岳氷河の消長を支配しているのは夏の気温と冬の降水(降雪量)である.海水準変化にともなう日本海の古環境の変化により,最終氷期の降雪量は大きく変動した.日本の山岳氷河は,対馬暖流が日本海に流入していた:最終氷期前半の亜氷期(約60,000~40,000年B. P.) に最も拡大した.これに対して後半の亜氷期(約30,000~10,000年B. P.) には,対馬暖流の流入が海面低下によって阻止されたために降雪量が著しく減少し,氷河の拡がりは小さかった.夏の気温低下量は,現在と氷期の雪線高度の違いから推定した.夏の降水:量が大きく減少したことは,中部日本から北海道にかけて顕著な谷の埋積が生じたことによって証拠づけられる.夏の降水量の減少,夏の気温低下は,ともにポーラー・7ロントの南下を示している.最終氷期の2つの亜氷期におけるポーラー・フロントの位置,永久凍土の分布,海氷の南限,風系などを図示した.冬の気温,年平均気温については化石周氷河現象から復元を行なった.日本海側山地と太平洋側山地での降雪量の違いについては,経線方向にとった雪線高度の分布図から,最終氷期を通じて両地域に降雪量の大きな差があったことを論じた.

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