Geographical review of Japan, Series B
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森林蒸発散に影響を与える因子
杉田 倫明
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1985 年 58 巻 1 号 p. 74-82

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抄録
森林蒸発散に影響を与える因子について,夏季のアカマツ林における熱収支・水収支の観測結果にもとづいて議論した。潜熱フラックスは,渦相関・熱収支法によって得た。樹冠の濡れの程度は,樹冠に付けたウェットネスインディケーターによって求めた。また,遮断量はスルーフォール,樹幹流,林外雨量の値から算出した。さらに,アカマツ林と隣接した牧草地の蒸発散量をアカマツ林の対照データとして利用した。これらのデータの解析の結果,以下の結論が得られた。1)濡れた樹冠の蒸発散速度は,乾いた樹冠のそれと比して,30%程度大きい。したがって,短い時間スケールでは樹冠の濡れは蒸発散量決定における重要な因子である。2)日蒸発散量に対しては,樹冠の濡れは重要な因子ではない。これは,一日中樹冠が濡れていることがまれだからである。3)アカマツ林の日蒸発散量は草地のそれより平均して35%多い。この差は,基本的には両者の有効エネルギーの差に起因する。
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