Geographical review of Japan, Series B
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日本におけるヒートアイランドの研究
-特にその気候学的側面を中心にして-
山下 脩二
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1988 年 61 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

本報告の目的は最近の日本におけるヒートアイランド現象に関する研究を,特にその気候学的側面を中心にして概観し,展望することである。先ず,都市化という観点から都市気候の形成プロセスを概念的に把握し,研究の位置づけを可能にした。つまり,都市化は人口の集中,地表面構成物の改善,生活空間の地上・地下への拡大で表現できる。そして,これらが地表面における幾何的・物理的特性や熱的条件を変化させ,その結果が放射収支・熱収支・水収支の改変となり,ヒートアイランドの誕生となる。以上のプロセスのうち,現在わが国で研究されているものや,とくに関心が寄せられているものについて触れた。気候学的関心としてはまず現象としてのヒートアイランドの把握である。分布的特徴と最大ヒートアイランド強度の出現時刻について述べ,人口との関係についてアメリカや西ヨーロッパとの違いを明らかにした。次にヒートアイランドの形成要因について,都市表面の幾何的凹凸(ラフネスパラメーター,大垣市),天空率(多摩川流域の都市),土壌水分(川越市)の面から考察した。しかし,これらはいずれも人口の場合と同様相関的関係であり,地理学的関心は高いが,ヒートアイランドの物理的構造へと結びつけていく必要もある。さらに都市の放射収支と熱収支について概観し,考察した。放射収支については夜間のヒートアイランドと長波長放射場との関連について主として小林 (1979, 1982) の研究を紹介した。熱収支の体系的研究はわが国ではなされておらず,顕熱や潜熱を個別に扱っているにすぎない。また,都市キャニオン内での熱収支の体系的観測も今後に待つほかない。最後に今後の研究課題・方向について言及した。

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