地理学評論
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中国におけるトラフグ養殖の発展と日本市場への輸出
林紀 代美
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2003 年 76 巻 6 号 p. 472-483

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抄録

本稿では,中国におけるトラフグ養殖と輸出,および日本市場の対応を考察する.その成果を,フグ流通,水産物流通の空間構造を検討する一助とする.中国の養殖業者は,高収益を得るため,高級魚であるトラフグの養殖に着手した.日本との立地条件などの違いから,異なる養殖手法が開発され,日本より低密度で大量の生産が行われている.今後は,生産拡大により生じる供給過剰への対策が必要で,中国国内でのフグ食自由化,市場形成が望まれる.今日の日本のトラフグ流通は,低価格の中国産フグが新たな構成要素として加わり,集荷地域が海外へも拡大するとともに,フグ利用・消費層が広がった.調理・提供の都合から生産するフグのサイズの目標が決まるなど,販売・消費のニーズが,流通の構造や構成要素とその活動,要素間の相互関係を規定する大きな要因となっている.また,中間魚輸入や,市場卸売業者によるフグ食文化の紹介や中間魚取引の仲介も確認された.

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