地理学評論
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76 巻, 6 号
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  • 荒又 美陽
    2003 年 76 巻 6 号 p. 435-449
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿は,現代パリの景観が形成され,受容される背後にある理念をとらえることを目的としている.ルーヴル美術館のガラスのピラミッドは,激しい論争を経て完成した.この景観が,さまざまな思想の交錯の中でコンセンサスを得ていく過程を分析することにより,パリにおける景観形成の特質を明らかにし得る.ここでは,景観の象徴性と調和をめぐる議論について分析した.結果として,論争にはある種の排他性がつきまとっており,新景観には「フランス文化」を侵害しないものであることが理念的に求められていたことが明らかになった.これは,1980年代のフランスが,世界におけるプレゼンスの低下を強く意識していたことを反映するものといえよう.論争の中で,賛否双方は,既存の「フランス文化」に多くを参照しつつ議論を繰り広げた.ガラスのピラミッドは,論争を通じ,まさにフランスの景観として読み込まれることによって受容されたのである.
  • 大宮,幕張,横浜を事例として
    佐藤 英人, 荒井 良雄
    2003 年 76 巻 6 号 p. 450-471
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,1980年代後半以降に,大規模なオフィス開発事業が展開された旧大宮市中心部,幕張新都心,横浜みなとみらい21地区を事例として,オフィスが郊外に配置された際の就業者における住居選択をアンケート調査から分析した.オフィスが郊外に配置されるならば,「郊外勤務・郊外居住」という職住関係の構築が理論的には可能である.しかし,分析の結果,転勤を命じられた時点のライフステージによっては,職住間の距離が増大することが確認された.ただし,転居を実施した者にとって,郊外への転勤は,持家取得の契機となっており,特に大手企業の情報関連部門に所属する幕張新都心勤務者は,早い年齢段階で持家を取得している.その理由として,(1)都心40km以遠に比較的安価な戸建住宅が供給されたこと,(2)都心40km以遠に取得しても,通勤が可能であること,(3)彼らが営業職よりも転勤回数が少ないことが挙げられる.
  • 林紀 代美
    2003 年 76 巻 6 号 p. 472-483
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,中国におけるトラフグ養殖と輸出,および日本市場の対応を考察する.その成果を,フグ流通,水産物流通の空間構造を検討する一助とする.中国の養殖業者は,高収益を得るため,高級魚であるトラフグの養殖に着手した.日本との立地条件などの違いから,異なる養殖手法が開発され,日本より低密度で大量の生産が行われている.今後は,生産拡大により生じる供給過剰への対策が必要で,中国国内でのフグ食自由化,市場形成が望まれる.今日の日本のトラフグ流通は,低価格の中国産フグが新たな構成要素として加わり,集荷地域が海外へも拡大するとともに,フグ利用・消費層が広がった.調理・提供の都合から生産するフグのサイズの目標が決まるなど,販売・消費のニーズが,流通の構造や構成要素とその活動,要素間の相互関係を規定する大きな要因となっている.また,中間魚輸入や,市場卸売業者によるフグ食文化の紹介や中間魚取引の仲介も確認された.
  • 宮崎県西臼杵地域を事例として
    加茂 浩靖
    2003 年 76 巻 6 号 p. 484-496
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,1990年代後半以降の公共投資政策の変化に伴い,国内周辺地域における地域労働市場がいかに変化したのかを検討した.実態調査によって得られたデータの分析の結果,公共土木事業の縮小,公共工事設計労務単価の低下,技術職に対する労働力需要の増大という1990年代後半以降における建設業雇用を取り巻く環境の変化に起因して,建設業者の雇用方針,地域労働市場に変化が生じていることが判明した.すなわち,定年退職後の再雇用者,女性および50歳代の建設業就業者の解雇,賞与減額などの労働条件の引下げ,若年技術者に対する採用意欲の強まりなどを指摘することができる.また公共土木事業の縮小により異業種部門を拡大する建設業者もみられるが,通年雇用の拡大に結び付く事例は少なかった.
  • 2003 年 76 巻 6 号 p. iii-iv_1
    発行日: 2003/05/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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