地理学評論
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規制緩和に伴う新規参入事業者と公営バス事業者の対応-京都市を事例として
井上 学
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2006 年 79 巻 8 号 p. 435-447

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抄録

本研究は,規制緩和後の乗合バス市場がコンテスタブルな市場として適当であるかどうか,京都市を事例に新規事業者と公営バス事業者との競争を通じて明らかにする.新規事業者の参入に対して,京都市営バスは既存のネットワークを活用する戦略をとった.具体的には,定期券制度の改善によって運賃面における優位性を打ち出した.また,市内中心部に参入しようとしたエムケイの行動に不安を持った京都市や商工会議所は,京都市営バスとエムケイとの協調を促した.エムケイが京都市営バスの路線の一部を受託することで,エムケイは新規参入をとどまった.エムケイのバス車両は京都市営バスが買い取ったためサンク.コストは最小限に抑えられた.この点において京都市のバス市場はコンテスタブルな市場といえる.今後,京都市営バスがさらなるサービスの再編によって最適な運賃が達成されることで,コンテスタビリティ理論に合致した状況になると思われる.

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