本研究は、英語による「優れたペア・プレゼンテーションの構成要素」を考察した先行研究(Shimizu, 2023)について、新たな研究素材を追加して同研究の合理性を再検証するものである。先行研究では、ペア・プレゼンテーションの全国大会で優勝・準優勝・3位を受賞した発表原稿3本(各10分間)を研究素材にとりあげた。言語統計分析を経て「優れた単独スピーチの構成要素」を分析した研究結果(Shimizu, 2020)との比較考察等により、ペアでのプレゼンに特有の構成要素として、(1)話者2名の「自然な会話形式」に基づく物語調の構成と、(2)話者2名の発話量の時系列分析が「起・転・結の構造」を示すことが提示された。本研究では、直近の同大会で優勝を収めた発表原稿1本(10分間)を新たな研究素材とし、先行研究に準拠した手法で分析した結果、上記の(1)(2)ともに先行研究の主張が支持された。特に、1文あたりの語数(WPS)は最小値の6.98で偏差も小さく、また1セッション(発話機会)あたりの平均語数も最小値の17.59であることから、顕著かつ自然な会話形式が認められた。また先行研究で示された「起・転・結の3ブロック構造」は、視覚的には異なる形でありながらも、中間部で話題転換を促す「誘発点」とともに、先行研究を支持する形で再現された。同結果をふまえ本研究では、より明確な研究分析を期すため、3ブロック構造を成す転換点と誘発点の具体的な判定基準を定義した。