宝石学会(日本)講演会要旨
平成16年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 9
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LA-ICP-MS分析法の宝石学への応用
*阿依 アヒマディ北脇 裕士岡野 誠
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抄録

宝石素材に供される岩石・鉱物の真偽を判断するためにはいくつかのラボラトリーの分析が行われる。すなわち、異なる波長 (UV-Vis-IR)による分光分析、蛍光X線分析 (XRF)、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分析や電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)などである。XRF分析は簡単便利で主元素と微量元素を同時に分析できる手法である。測定対象はバルク状、粉末状など、多様な試料を測定することができ、宝石素材の分析には非常に有効である。更にこれより高感度の超微量分析を行う場合はICP-AES、ICP-MSなどの手法があるが、通常試料を酸で溶解、もしくはアルカリで融解し溶液化する必要があり、宝石素材には使用できない。また、微小領域の分析では元素マッピング機能をもつEPMAを用いるが、前処理が必要なことやPPMオーダーの分析には感度が十分ではないなどの欠点がある。
 このように宝石鉱物の高感度分析には従来の分析手法にはそれぞれの限界がある。そこで当技術研究室ではICP-MSの高感度を維持しつつ固体試料で局所分析が行えるレーザー・アブレーション(LA)―ICP-MS分析法に着目し、宝石鉱物の化学組成及び微量元素~極微量元素分析への応用を開始した。
 宝石の地理的地域の産地鑑別はそれを行うそれぞれの鑑別ラボの意見であり、その宝石の品質や価値を示唆するものではない。このことはCIBJOのルールにおいても基本理念となっている。とはいっても検査するラボごとに異なる見解がでるようでは顧客は混乱することになり宝石鑑別ラボの信用を落とす結果となる。産地鑑別を行う以上はより精度の高い科学的根拠の下に行われるべきである。
 本報告では(LA)―ICP-MS分析法を用いて極微量に含有される不純物元素の分析を行うことにより、サファイアやエメラルドの地理的産地鑑別の可能性について言及する。

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