抄録
最近、消費者に人気のある、いわゆるアイスブルーダイヤモンドと呼ばれている照射処理ダイヤモンドについて、検査する機会を得た。アイスブルーダイヤモンドは、従来の濃青色照射処理ダイヤモンドとは異なり、色相が淡青色である。濃青色に照射処理されたダイヤモンドは、キューレットやガードルにブルーの色だまりやブラウンの色帯があったが、アイスブルーのダイヤモンドには、原材料がほぼ無色であるため、ブラウンの色帯は見えず、色だまりも見えないものもある。そして、このようなアイスブルーダイヤモンドは、自然界で照射を受けたブルーグリーン系のGR1タイプとよばれる天然ダイヤモンドと色相が似ている。
可視分光分析で濃青色照射処理ダイヤモンドは、放射能により照射を受けてできた空孔の吸収(GR1;741nm)が顕著にみられ、一方アイスブルーダイヤモンドと天然で照射を受けたダイヤモンドは、可視分光でGR1(741nm)のピークが、濃青色照射処理ダイヤモンドに比べ、わずかに検出される程度である。
キューレットに色だまりがみえず、またGR1(741nm)が弱く検出されるものは、色の起源が自然界による照射なのか、人為的に照射処理を行われたものなのか、看破が困難な場合もある。
以前、当所で、ほぼ無色に近いカラーグレードの天然ダイヤモンド数石をソーティングした。今回、それらの石が照射処理をされアイスブルー色に変化し、再度当所に持ち込まれた。そこで、これらの石を、フォトルミネッセンス(PL)で微小領域による分析を試み、また自然界で照射を受けたダイヤモンドとの相違についても考察した。