宝石学会(日本)講演会要旨
平成20年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 11
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いわゆる“グリーン・アンバー”についての13NMR及びFTIR分光分析研究
*阿依 アヒマディ
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抄録

2007年半ばに“グリーン・アンバー”と呼ばれている商品が香港市場でみられるようになり、9月香港国際ジュエリー&時計フェアの有機宝石の新目玉となった。2008年1月のIJTや2月のアメリカ・ツーソン・ジェム・フェアにも続々登場し、“天然カリビアン・アンバー”や“希少なバルト・アンバー”という商品名で香港やポーランドやリトアニアなどの琥珀業者によって販売されている。販売金額は通常の天然バルト産琥珀やドミニカ産琥珀より高値で取引されており、香港市場での登場と同時に、鑑別機関にビーズやピアー・シェープなどの“グリーン・アンバー”が鑑別依頼で持ち込まれるようになった。黄緑から緑色を呈するこの商品は非常に高い透明感を有し、ドミニカ産の天然ブルー・アンバーに見られる緑色よりもはるかに濃色である。しかし、天然琥珀に一般的な内包物(植物の葉の破片、昆虫、土など)はほとんど含まれず、燃やしたときに放出する芳香の臭いは天然琥珀よりやや薄いのである。この“グリーン・アンバー”は若い樹脂であるコーパルを超える硬度、比重および耐酸性(溶解度)を有し、その物理学的特性は琥珀に酷似する。しかし、このような美しい緑色を示す琥珀は天然起源としては報告例がなく、処理された可能性が高い。このような“グリーン・アンバー”に対する処理法はほとんど公開されていないが、香港とドイツの製造業者から直接得られた情報によると、従来、バルト産やドミニカ産やメキシコ産などの琥珀を加熱するために使用したautoclaveを用い、温度と圧力などのパラメーターを制御し、数段階の加熱過程を設け、長時間で加熱処理を行う手法である。加熱に使われている材料は、主にドミニカ産やウクライナ産や南米産などの琥珀とカリブ海のコーパルが対象になっている。
本研究ではこのような処理された“グリーン・アンバー”の性質を追求するため、香港やドイツやポーランドなどの処理業者から製品を入手し、また、異なる産地の(地質年代の異なる)琥珀とコーパルを香港業者のautoclaveを用いて加熱処理し、琥珀とコーパルの色の変化を観察した。同時に、FTIRによる赤外分光分析法や固体高分解能13CNMR法(核磁器共鳴法)により、“グリーン・アンバー”と天然琥珀との分子構造の違いや加熱処理前後の構造変化を調べ、グリーン色への変化するメカニズムを検討した。

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© 2008 宝石学会(日本)
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