宝石学会(日本)講演会要旨
平成20年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 6
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最近遭遇した“岩絵具”について
*林 政彦安藤 康行
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抄録

青色宝石として人気の高いラピス・ラズリを構成する主な鉱物であるラズライト(Lazurite:(Na,Ca)8[(S,SO4,Cl.OH)2│(AlSiO4)6])、空青色のトルコ石(Turquoise:Cu2+Al6[(OH)2│PO4]4・4H2O)、鮮緑色のマラカイト(孔雀石:Malachite:Cu2[(OH)2│CO3])などは、ふるくから岩絵具として使われていた。
わが国では、7~8世紀に描かれた奈良県高松塚の壁画において、青色はアズライト(藍銅鉱)、緑色はマラカイト(孔雀石)、赤色は辰砂(Cinnabar:HgS)などの鉱物が使われており、12世紀頃の「源氏物語」の絵巻も同様な岩絵具で描かれていた(山崎一雄他、1979)。
最近流通していた岩絵具について、X線粉末回折を行った結果は、以下のとおりで、色調などを調整するために石英や粘土鉱物などを混ぜることが分かった。
・黒色:Graphite(石墨:C)
・青色:Lazurite(ラズライト:(Na,Ca)8[(S,SO4,Cl.OH)2│(AlSiO4)6])、Azurite(藍銅鉱:Cu3[OH│CO3]2)、トルコ石(Turquoise:Cu2+Al6[(OH)2│PO4]4・4H2O)
・緑色:Malachite:Cu2[(OH)2│CO3]) ・赤色:Cinnabar(辰砂:HgS), Realgar(鶏冠石:As4S4), Hematite(赤鉄鉱:Fe2O3
・黄色:Orpiment(雄黄:As2S3), Goethite(針鉄鉱:α-FeOOH)
・白色:Aragonite(霰石:Ca[CO3]), Calcite(方解石:Ca[CO3]), Plagioclase(斜長石:(Na,Ca)Al(Al,Si)Si2O8), Quartz(石英:SiO2), Clay minerals(粘土鉱物)

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© 2008 宝石学会(日本)
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