宝石学会(日本)講演会要旨
平成22年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 10
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スピネルの加熱についての追加実験
*中島 彩乃古屋 正貴
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抄録

平成21年の宝石学会(日本)でスピネルの酸化雰囲気での700℃~1100℃の加熱について報告致しました。その実験で、赤、青、紫などのすべてのスピネルでわずかに黄色みを帯び、全体に暗くなる変色が確認されました。今回さらに高い温度でスピネルを加熱することによって、どのような色の変化が起こるか、検証しました。
今回の実験では前回と同じく、スリランカ産、マダガスカル産、ミャンマー産のスピネルを新たに用意し、それらを1400℃、1700℃でそれぞれ5時間、酸化雰囲気で加熱し、その変化を観察しました。Dr. John L. Emmettらの報告では、1400℃で5時間の加熱でタンザニア産の赤系のスピネルに部分的に青い色帯が発生するという報告がありましたが、そのような変化は確認されず、どの色にも全体に黒色化(暗色化)する傾向が確認されました。
また、1700℃での加熱ではさらに全体的に透過が少なくなるものの、緑~黄色の透過は比較的弱くならない傾向が見られ、薄紫色だった石は、通常マグネシア・スピネルでは見られない緑系の色になりました。その色はガーナイトとも異なる、照射処理のグリーンダイアモンドのような彩度の低い暗緑色でした。他にも赤紫やピンクは褐色系の色となり、青も薄い黄緑の色に変わりました。
これらの変化は、加熱によって可視光全域において透過が減少しましたが、特に紫~青色域の減少が大きく、赤色域はそれより小さく減少し、緑色~黄色域の減少は小さいものだったことによるものでした。そのため、緑~黄色の色が相対的に強くなったように表れました。これらの加熱による色相の変化を可視分光スペクトルの変化を中心に報告します。

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