宝石学会(日本)講演会要旨
平成22年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 榎並 正樹
    セッションID: 1
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    本講演では、超高圧変成岩の産状や研究史を概観するとともに、超高圧変成岩に含まれる鉱物の特徴や研究方法についても紹介する。
    要旨は、下記のPDFをご覧ください。
  • 佐藤 友恵, 並木 俊裕, 矢崎 純子
    セッションID: 2
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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     放射線照射線量を0.03KGYから100KGYまで7段階に分けて、浜揚げ直後のアコヤ真珠に照射した。
    その物性については、以下の項目を照射前後に測定し比較検討した。
    (1) 真珠内部の有機物分布の可視性
    (2) 反射分光スペクトル
    (3) 光透過性
    (4) 紫外線照射による蛍光性
     なお比較試料として養殖用核ならびに光不透過の稜柱層真珠、ピンク貝貝殻片の変化も測定した。
  • 山本 亮, 吉田 孝一, 河村 揚一
    セッションID: 3
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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     商品として流通している各種真珠に見られる劣化現象を、発生原因別に以下のように分類し、その劣化メカニズムや経時変化、防止策、修復の可否等について検討した。
    (1) 加工キズ
    (2) 層われ、層の剥がれ
    (3) 稜柱層起因のひびやわれ
    (4) 褪色、変色
    (5) 表面溶解
  • 田中 宏樹, 横瀬 ちひろ, 矢崎 純子
    セッションID: 4
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    真珠のテリについて、その客観的測定の可否を追求する研究の第一報である。
    アコヤ真珠を3種の干渉色パターンに分類した。次にそれらの発現強度を、先ず習熟者による目視評価で7段階に分類した。この分類に、オーロラビューアーによる反射干渉光評価分類と光輝測定機による測定光輝値がどのように対応しているかを検討した。
  • 渥美 郁男, 矢崎 純子
    セッションID: 5
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    天然のピンクガイを母貝とするコンク・パールは通常の真珠層を持つ真珠と違い交差板構造を持つことが知られている。コンク・パールの生産量が少なく珍重されているためかピンクガイ(コンク・パールの母貝)貝殻を研磨して天然のコンク・パールのような外観に仕上げたフェイクと呼ばれる摸造真珠も存在している。今回は拡大検査を駆使してコンク・パールやピンクガイの表面観察から天然のコンク・パールと摸造真珠との相違点を考察した。そして更にピンクガイを実際に切断し貝殻部位の違いによってどのような模造真珠が製造できるか検証した。
    また2009年11月に「コンク・パールの養殖に成功」の報告もあり、軟X線透過検査がコンク・パールの検査に重要な役割を持つようになった。今回はその検査に際し考慮すべき点も指摘し加えて発表する。
  • 藤田 直也, 中條 利一郎, 谷田部 純
    セッションID: 6
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    ミャンマー産の琥珀を分析する機会を得たので、その分析結果を報告する。
    琥珀といえばバルチック産やドミニカ産が有名だが、ミャンマー産の琥珀は古くから工芸品として日本に入っていたといわれている。ミャンマー産の琥珀の色相は赤色のものが有名だが、今回分析したサンプルは緑がかった黄色のものが多数を占めていた。
    FT-IRの分析結果は、バルチック産やドミニカ産のものとは異なるデータが得られた。蛍光性も非常に特徴的で、赤い琥珀と緑がかった琥珀では異なる特徴を示した。
    インクルージョンについても昆虫やその他特徴的なものが見られた。核磁気共鳴(NMR)では年代測定も行い、これらの詳細について発表する。
  • 川崎 雅之, 加藤 睦実, 廣井 美邦 廣井 美邦, 宮脇 律郎, 鍵 裕之, 砂川 一郎
    セッションID: 7
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    奈良県天川村洞川(どろがわ)にある五代松(ごよまつ)鉱山は石灰岩とそれに貫入した大峯花崗岩質岩体との境界にできた接触交代鉱床から磁鉄鉱を採掘していた鉱山である。鉱体の一部から黄色に着色した水晶が産出し、レモン水晶と称されて標本市場に流通している。この水晶はc軸方向に伸長した樹枝状のインクルージョンを含んでいるが、これは他産地の水晶には見られない特徴である。
    この水晶に含まれている樹枝状のインクルージョンはEPMA及びX線粉末回折の結果、水晶であることがわかった。カソードルミネッセンスにより観察された内部組織には以下に示す特徴がある。(i) 中心部の樹枝状晶の周囲には柱面に平行な成長縞が発達している、(ii) 錐面が形成したセクターは錐面直下の表層に限られる。
    これらの組織は(i) この水晶が高過飽和条件下での樹枝状成長とそれに続く低過飽和条件下での層成長という二つの過程を経ていること、(ii) 樹枝状水晶が種子となり、多面体水晶の形成を規制していることを示している。同様の過程で形成された組織で、砂糖きび絞り機の歯車(trapicho)に似た組織はトラピッチェ(trapiche)パターンと呼ばれている。これまでにエメラルド、コランダム、トルマリンで報告されているが、今回観察した水晶も類似の組織を持ち、トラピッチェ・クオーツ(trapiche quartz) と呼べるものである。
    (地球惑星科学連合2010年大会で発表)
  • 古屋 正貴, 剱持 苗子, 檀上 圭司, ウンア ジョン
    セッションID: 8
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    北海道の鉱山から産出したロードクロサイトは、日本から産出する数少ない宝石の一つである。北海道古平郡古平町稲倉石鉱山はマンガンの採掘を目的に昭和59年まで稼働していた。ロードクロサイトはそのマンガン鉱石の副産物として産出していたものであった。しかし、海外からのマンガンの鉱石の輸入に押され、鉱山は閉山してしまい、ロードクロサイトの産出もなくなってしまった。現在、マンガン鉱山が稼働していた頃に産出されたものが流通している状況である。
    一般にロードクロサイトには、ファセットカットにもされる透明石と、カボションカットにされる半透明石がある。前者では世界最大の結晶を産出するアメリカのコロラド産が有名であり、後者ではインカ・ローズの別名に用いられているようにアルゼンチン産が有名である。これらを含め、中国、ペルー、ロシア、ブラジル、南アフリカ産のものと北海道産のロードクロサイトを比較した。
    MnCO3を成分とするロードクロサイトは、透明度の高いものであると蛍光X線成分分析機ではMnOしか検出されないものもあるが、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの不純物が検出されるものもある。また、北海道のものを始め、半透明のものでは不純物も多く検出される。それら不純物の含有量や割合を元に産地ごとの特性を調べてみた結果、北海道産について他の産地より、マンガン量が少ない、鉄分が多い、亜鉛は少なく、マグネシウムは少なく、カルシウムは多いなどの特徴が見られた。
    また、紫外・可視分光スペクトルや、FT-IRなどのスペクトルにも特徴が見られたので、それについても合わせて報告したい。
  • ウィジェセカラ チャンダナ
    セッションID: 9
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    スリランカ南部のマータラ(Matara)地区とハンバントタ(Hambantota)地区は、ヘソナイトガーネットの産地として有名である。
    この2つの鉱山は約60Km離れているところにあり、産出するガーネットは異なる色を呈する。産地情報を含めて両者の宝石学的特性について紹介する。
    続いて、最近鑑別した宝石について紹介する。
    (1) 天然ヴェイリネナイト(パキスタン産)
    (2) アンフィボールを内包した天然アパタイト(パキスタン産)
    (3) ラズライトを内包した天然スカポライト(アフガニスタン産)
  • 中島 彩乃, 古屋 正貴
    セッションID: 10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    平成21年の宝石学会(日本)でスピネルの酸化雰囲気での700℃~1100℃の加熱について報告致しました。その実験で、赤、青、紫などのすべてのスピネルでわずかに黄色みを帯び、全体に暗くなる変色が確認されました。今回さらに高い温度でスピネルを加熱することによって、どのような色の変化が起こるか、検証しました。
    今回の実験では前回と同じく、スリランカ産、マダガスカル産、ミャンマー産のスピネルを新たに用意し、それらを1400℃、1700℃でそれぞれ5時間、酸化雰囲気で加熱し、その変化を観察しました。Dr. John L. Emmettらの報告では、1400℃で5時間の加熱でタンザニア産の赤系のスピネルに部分的に青い色帯が発生するという報告がありましたが、そのような変化は確認されず、どの色にも全体に黒色化(暗色化)する傾向が確認されました。
    また、1700℃での加熱ではさらに全体的に透過が少なくなるものの、緑~黄色の透過は比較的弱くならない傾向が見られ、薄紫色だった石は、通常マグネシア・スピネルでは見られない緑系の色になりました。その色はガーナイトとも異なる、照射処理のグリーンダイアモンドのような彩度の低い暗緑色でした。他にも赤紫やピンクは褐色系の色となり、青も薄い黄緑の色に変わりました。
    これらの変化は、加熱によって可視光全域において透過が減少しましたが、特に紫~青色域の減少が大きく、赤色域はそれより小さく減少し、緑色~黄色域の減少は小さいものだったことによるものでした。そのため、緑~黄色の色が相対的に強くなったように表れました。これらの加熱による色相の変化を可視分光スペクトルの変化を中心に報告します。
  • 小林 泰介, 北脇 裕士, 阿依 アヒマディ, 岡野 誠, 川野 潤
    セッションID: 11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    最近、アフリカのモザンビーク産と称されるルビーを検査する機会が増えている。GAAJ-ZENHOKYOラボでも、実際の鑑別ルーティンで、2009年3月頃からこのようなモザンビークの新鉱山産であると考えられるルビーを見かけるようになった。今回はこれまで検査したモザンビーク産と思われるルビーの鑑別特徴について報告する。
    拡大検査では、タンザニアWinza産のルビーに見られるような顕著な双晶面や、液体-液膜インクルージョン、ネガティブ・クリスタル、透明および黒色不透明な結晶インクルージョン、および微小インクルージョンなどが見られた。表面近くに存在していた結晶インクルージョンをラマン分光分析および蛍光X線組成分析により同定した結果、最も一般的に見られる結晶は角閃石(パーガサイト)であることがわかったほか、アパタイトも確認された。
    赤外分光スペクトルには、3081cm-1と3309cm-1の吸収がペアになったブロードな吸収バンドが現れる。これらの吸収は、フラクチャー中に存在するベーマイトに起因する可能性があり、高温で加熱されたルビーにはこのような吸収バンドは現れない。顕著な3161cm-1の吸収ピークがタンザニア Winza産のルビーの赤外吸収スペクトルに特徴的に現れるように、このようなペアになった赤外吸収スペクトルは非加熱のモザンビーク産ルビーの識別に役立つと思われる。さらに、ベーマイトに起因すると考えられる2074cm-1と1980cm-1の弱い吸収が付随する場合もある。
    蛍光X線分析により化学組成を分析した結果、主元素であるAl2O3のほか、酸化物として0.3~0.8 wt%程度のCrと0.2~0.5 wt%程度のFeが検出された。このようなFeの含有量は、ミャンマー産やマダガスカル産などの非玄武岩起源のものよりも高く、タイ産のような玄武岩起源のものよりは低い。LA-ICP-MSによる微量元素の分析結果では、タンザニア Winza産のルビーの場合に比べ、Ti,V,Cr,Gaの含有量が高く、Feの含有量が低い事がわかった。
    モザンビーク産ルビーは、地理的地域が近接していることもあり、タンザニアのWinza産ルビーと類似した宝石学的特徴を有しているが、分光スペクトル及び微量元素分布を詳細に比べることによって両者の識別が可能であることがわかった。今回はこれに加えて、非加熱のモザンビーク産ならびにタンザニア産ルビーの原石を用いた加熱実験を試み、処理に伴う外観、内部特徴および分光スペクトルの変化などについても検証した。
  • 阿依 アヒマディ, 郷津 知太郎, 蜷川 隆
    セッションID: 12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    オリンピック・サンストーンと称されている赤色アンデシンの色の起源に世界から関心が寄せられている中で、多くのジェモロジストは当該色が銅による拡散加熱処理によるものではないかと疑っている。その真偽を突き止める為に、中国のチベットと内モンゴル自治区の鉱山を調査した。その結果、チベットでは赤色(稀に緑色)のアンデシンが実際に産出され、内モンゴル自治区の固阳県の鉱山では淡黄色のみのアンデシンしか産出されていないことが確認できた。また、大量に生産された内モンゴル産アンデシンは拡散加熱処理(人為的な着色)の原材に利用されているこという確かな情報が得られた。
    採集した両産地のアンデシン試料と中国国内で銅による拡散処理が施されたことが確実な赤色アンデシンを比較してみると、それらの宝石学的特性値や化学組成値はほとんど同じであり、斜長石の一種であるラブラドライトとアンデシン組成境界付近に分布するCaを富んだアンデシンであることが分かった。しかし、内部組織の観察では、チベット産赤色アンデシンと拡散処理した赤色アンデシンに明瞭な差異がなく、両者の識別は非常に困難である。また、LA-ICP-MS法で分析した微量元素であるBa/SrとBa/Liによる化学フィンガープリントから、多くのチベット産天然試料は拡散処理試料と異なる分布領域を示すが、一部に重複が見られ、完全な識別法の確立は今後の重要な課題として残されている。本研究では、熱ルミネセンス分析法を用いて、試料からの発光量を測定し、天然と処理したアンデシンの区別を試みた。
    主に鉱物の周囲に分布する放射性元素起源の放射線(α線,β線,γ線)によって、結晶中の電子が励起される。この電子が格子欠陥等からなる捕獲中心に捕らえられた場合、これを捕獲電子と呼ぶ。この様な結晶を加熱した場合、格子の熱振動によって捕獲電子は再度伝導帯に励起され、結晶中を移動した後、発光中心の正孔と再結合する。この際に発光する光を熱ルミネッセンス(Thermoluminescence : TL)という。
    鉱物がある程度の期間(環境中の線量に依存するが、およそ数千年、またはそれ以上)天然の環境におかれている場合、自然放射線により鉱物中に捕獲電子が蓄積され、加熱により熱ルミネッセンス(natural TL)が観測される。一方で、天然から採集した鉱物に人為的な加熱を加えた場合(およそ500℃前後で数分程度)、捕獲電子は正孔と再結合するために熱ルミネッセンスは観測されなくなる。 今回の研究に、チベット産天然赤色試料7点、内モンゴル産天然淡黄色試料2点、中国から提供されたCuによる拡散加熱処理試料3点、GIAによるCu拡散加熱実験試料1点を分析の対象とした。岡山理科大学理学部に設置された熱ルミネッセンス測定装置(浜松ホトニクス製光電子増倍管R762,フィルター:Corning 4-69,Corning 7-59)を使用した。試料の一部を粉末にし、加熱試料板に載せ、常温から450°までの熱ルミネッセンスのグロー曲線を測定した。
    分析の結果、チベット産と内モンゴル産アンデシン試料に、300~450℃の間に極大な発光ピークを示した。Cuによる拡散加熱処理の試料には、このような強い発光強度がなく、弱いかまたは発光しないグロー曲線が確認できた。この減少することに着目すれば人為的に加熱の有無を判断することができると推定される。しかし、加熱処理をしたにも関わらず発光するのはこの発光が自然放射線の照射によって生じた発光ではなく、酸素等の吸着による発光である可能性がある。今後、測定波長領域を広げたり、人工的に放射線を照射したりして、天然及び拡散処理アンデシンの識別に対する熱ルミネッセンス法の有効性について更に検証していく予定である。
  • 林 政彦, 山崎 淳司
    セッションID: 13
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    遭遇した未知の宝石を同定する場合に、X線回折法を利用するのは、常套手段の一つである。このような宝石への応用は、現在までに発見された鉱物約4,600種にもおよぶX線回折パターンのデータベースが完備されていて、これを利用することが容易にできることにある。しかし、これまでは、試料を粉末にするか、あるいは、そのまま試料ホルダーに試料を固定したまま、X線を照射させて回折パターンを得ていた。試料である宝石を、粉末にしては、非破壊で検査を行うという、宝石検査の前提条件から外れ、また、宝石を固定しては一定方向からのX線回折パターンしか得られない、ということで、かなり限られた使用例しか知られていなかった。
    最近、試料ホルダーを回転させながら、試料の微小領域にX線を照射させ、回折パターンを得る方法が開発され、岩石薄片中の鉱物の同定に威力を発揮している。
    今回、この微小領域X線回折法を宝石に応用した例をいくつか紹介する。
  • 江森 健太郎, 岡野 誠
    セッションID: 14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    ダイヤモンドは、窒素を多く含むI型と窒素を殆ど含まない_II_型に大別される。グレーディングに供される無色~ほぼ無色の宝石質天然ダイヤモンドは、ほとんど(99%以上)が_I_型である。_II_型に属するダイヤモンドには、一部の天然ダイヤモンドの他、HPHT処理により褐色から無色(ごく一部のピンク及びブルー)化されたものや、高温高圧法およびCVD法による多くの合成ダイヤモンドが含まれている。このため、鑑別ラボでは、ルーティン・ワークにおいて、ダイヤモンド・シュア(DiamondSure®)、ケープ・ディテクター(CapeDetector)等の専用機器やFTIRなどの分析において、グレーディングに供されるすべてのダイヤモンドのタイプ分別を行っている。このタイプの粗選別において、_II_型と判断されたダイヤモンドは、さらにラマン分光分析装置を用いたフォト・ルミネッセンス分析やダイヤモンド・ビューによる観察等、より高度な分析を必要とする。しかしながら、ラマン分光装置はコスト面や操作性において難点があり、国内においては一部の鑑別ラボにしか導入されていない。
    今回紹介するDTC「DiamondPlusTM」は、このフォト・ルミネッセンス分析を行う前の予備的な検査を簡易的に行うために、DTCにより開発された_II_型ダイヤモンドの専用分析機器である。装置の外形は、新型のダイヤモンド・シュアとほぼ同形でコンパクトに設計されている。測定は、装置内のプールに液体窒素を満たして、サンプルをセットし、測定ボタンを押すだけのきわめてシンプルなもので、数秒で分析結果が表示される。「PASS(天然ダイヤモンドである)」と表示されたものは、天然ダイヤモンドの確証が得られたもので、さらなる検査を必要としない。「REFER(フォトルミネッセンス分析が必要である)」と表示されたものは、この分析においては天然の確証が得られなかったもので、フォト・ルミネッセンス分析を必要とする。さらに、合成ダイヤモンドの確証が得られた場合には、「SYNTHETIC(合成ダイヤモンドである)」もしくは「SYNTHETIC-CVD(CVD合成ダイヤモンドである)」の表示がなされる。
    本研究では、中央宝石研究所のルーティンに入ってきたダイヤモンドや、中央宝石研究所、全国宝石学協会が所有するHPHT処理されたダイヤモンド、合成ダイヤモンド等、さまざまなサンプルを用いて、このDiamondPlusTMの有効性について検討した。
    結果、このDiamondPlusTMではHPHT処理を施したダイヤモンドや高温高圧法で合成されたダイヤモンドにはすべて「REFER(フォトルミネッセンス分析が必要である)」の結果を得ることができ、CVD法で合成されたダイヤモンドについても「SYNTHETIC-CVD(CVD合成ダイヤモンドである)」の結果を得ることができた。天然ダイヤモンドについてはカラーグレードの低いものについては「REFER」という結果が出るものも多く存在するが、予備検査として用いるには十分な性能を備えていることがわかった。
  • 北脇 裕士, 阿依 アヒマディ, 岡野 誠, 川野 潤
    セッションID: 15
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
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    2003年8月に米国のApollo Diamond inc.がCVD法で合成したダイヤモンドを宝飾用に販売する計画を明らかにして以降、宝石業界においてもCVD合成ダイヤモンドが注視されるようになり、宝石学文献にも登場するようになった。2007年以降、国際的な宝石鑑別ラボの鑑別およびグレーディング実務に供せられたCVD合成ダイヤモンドの報告が散見されるようになり、当ラボにおいても2008年の6月に初めて無色のCVDダイヤモンドが鑑別依頼で供出されている。
    最近になって、“HPHT処理が施された天然ダイヤモンド”という触れ込みで計48ピースのピンク・ダイヤモンドが色起源の検査のため当ラボに供せられた。これらはほとんどが0.2ct以下で、検査の結果、CVD法で合成後、HPHT処理が施され、さらに放射線照射と低温下でのアニーリング(焼きなまし)が色の原因であることが分かった。
    本報告では、これらのピンク色のCVD合成ダイヤモンドについて、標準的な宝石学的検査およびラボラトリーの技術を用いた分析結果の詳細を述べ、天然ピンク・ダイヤモンド、照射処理ピンク・ダイヤモンドおよび高温高圧法合成ダイヤモンドとの比較について言及する。
    標準的な宝石学的検査
    拡大検査における非ダイヤモンド構造炭素由来と思われる黒色ピンポイントの存在、交差偏光下における筋模様の歪複屈折、長・短波紫外線下における鮮やかな紫外線蛍光がCVD合成ピンク・ダイヤモンドの手掛かりとなる。
    ラボラトリーの技術
    赤外分光(FTIR)においては、すべてのCVD合成ピンク・ダイヤモンドは、見掛け上タイプ_II_であった。数ピースに3029 cm-1の吸収ピークが認められたほか、2800~3000 cm-1の範囲に数本の吸収が認められるものがあった。
    紫外-可視分光分析においては、すべてに637 (N-V-), 595および 575nm(N-V0)が観察された。これらに加えて741(GR1)と503nm(H3)が認められたものもあった。
    ルミネッセンス・イメージの観察では、検査した48ピースのうちDiamondViewTM では7ピースにCVDダイヤモンドに特有の積層構造のイメージが観察され、CLでは26ピースしか観察しなかったが、15ピースに同様のイメージが観察された。すべてのサンプルにおいてUVおよびCL双方とも575nmセンタによる極めて鮮やかなオレンジ色の蛍光色を示した。
    514nm波長のレーザーによるPLスペクトルは637 (N-V-)および 575nm(N-V0)が48ピースすべてに検出され、Si関連の737nmピークは4ピースにしか検出されなかったが、633nm波長のレーザーでは48ピースすべてに検出された。
    325nm波長のレーザーによるPLスペクトルは503.1nm(H3)が48ピースすべてに検出され、496.1nm(H4)が31ピースに検出された。また、504.9と498.3nmの一対のピークが48ピースすべてに見られた。415.2nm(N3)にピークが検出されたものが6ピースあった。
  • 三浦 保範
    セッションID: 16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/03
    会議録・要旨集 フリー
    1)コンゴ産ダイヤモンドを電顕によるその場観察と分析から、炭酸塩(方解石組成を含む)と石膏組成を含む超微粒子が観察できた。また、結晶面の明確な微細な岩塩結晶が観察できる。これらに表面に不規則な微細炭素含有物が多く観察できる。これらの微粒子にはMgが含まれないFeケイ酸塩組成粒子が含まれている。
    2)対比した南アフリカキンバレーダイヤモンドは、コンゴ産のデータと異なっている。炭酸塩組成がCa,Mg,Fe,Tiが含まれているが、塩素含有物(岩塩結晶)は観察できない。
    3)超高倍観察で、南アフリカダイヤモンドはナノメーターオーダーの炭素微粒子集合体であるのに対して、コンゴ産ダイヤモンドは不規則な積層組識と微細組織が観察できる。
    4)以上のデータ対比から、コンゴ産ダイヤモンドは地表部比較でそれまでの形成過程を消すような新しい形成過程が考えられる。
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